囲炉裏の灯に照らされる心のふるさとを。 果樹オーナーとお接待の宿「碧」

都会の喧噪を忘れるような、やすらぎの場所。

阿南市吉井町。加茂谷と呼ばれるこの地区一帯は、阿南市の西部に位置し、自然豊かな山々と那賀川の清流を有する美しい地域だ。
その山際に位置する「碧」。2005年に建てられたこの宿は、果樹オーナー制度も運営する原夫妻が経営している。
漆喰塗りの味わい深い建物の中に入ると、杉の木の香りが心地よい。囲炉裏を囲んで談笑できる広間は、モダンな雰囲気を持ちながらも懐かしさを感じられる空間だ。
両親が加茂谷地区の兼業農家だった原さん。20歳で上京し東京で働いていたものの、父親の急死をきっかけに40代で家業を継ぐことになったという。
しかし斜陽産業と言われる農業だけでは続けていけないと考え、当時県内では珍しかった果樹オーナー制度を始めた。その一環として、契約したオーナーに宿泊してもらうための宿を作ることにしたのが「碧」のはじまりだ。
宿の裏山にある広大な果樹園によって営まれる果樹オーナー制度では、みかんやすだちなどの柑橘類から桃やたけのこまで、バラエティに富んだ食材から選ぶことができる。果樹1本からオーナーになることができ、時期がくるたびに訪れ収穫することはもちろん、足を運べない遠方のオーナーには宅配することも可能だという。契約の長いオーナーだと、生まれたばかりだった子が大きくなって、一緒に収穫をするようになるまでの付き合いになることもあるそうだ。
「お客様とは継続的なお付き合いをしていきたい。田舎の、親戚のおじちゃんおばちゃんのような存在になれたら」
客室は4つ、ツインルームが3つとシングルルームが1つ。ソファベッドも利用することができ、最大10人の宿泊が可能。果樹オーナーはもちろん、一般客、そしてお遍路さんの宿としても利用が多い。第20番札所鶴林寺と第21番札所太竜寺の間に位置する碧。木と漆喰でできたあたたかな雰囲気の客室の外には自然豊かな山の景色が広がっており、静かにゆっくりと流れる時間が長い旅の疲れを癒してくれる。
「満室にはしないようにしていて。私たちもお客さんもバタバタしないように、のんびりとした田舎らしい時間の流れる空間を目指しています」
今は原さんが果樹園を、奥さんが宿をメインにそれぞれ分業で営んでいる。
今後の展望を尋ねる。「細々でも続けていくことを目標にしています。加茂谷にはいいところがいっぱいあるのに、それを立ち止まって感じる場所がなくてはいけないから。ここに宿があることが大切」
街のせわしない日々を一時忘れてしまうような空間。ゆったりとくつろげる憩いの場として、第二のふるさとに選んでみるのもいいのではないだろうか。

果樹オーナーの宿。碧
〒771-5172 徳島県阿南市吉井町片山12
電話番号:0884-25-0267
駐車場:あり
 

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